NHKのEテレ「団塊スタイル」で、南こうせつさんの『神田川』に
フォーカスした番組をやっていました。私も中学に入った頃、毎日の
ように聞いていた、あの名曲です。
フォークグループ、かぐや姫の三枚目のアルバムに収録されたこの曲は
喜多條忠さんの作詞、南こうせつさんの作曲です。
その誕生秘話を、こう、紹介していました。
当時放送作家だった喜多條さんに、こうせつさんが、詞を作って下さい、
ただ、締切は今日なんです、と、かなり強引にお願い。
深夜ラジオのパーソナリティをやっていたこうせつさんの人柄を
よく知っていた喜多條さんは、これを引き受けます。
当時、東京は神田川の近くのアパートに住んでいたことがある
喜多條さん、後に奥さんになる女性との同棲中で、
自分の周りの生活や想いを、詩につづります。
やがてできた歌詞を、電話でこうせつさんに伝えました。
「ふんふん、あなたは、もう、忘れたかしら、ですね・・・」
スーパーのチラシの裏に書きとったこうせつさんは、
2~3分後に喜多條さんに電話してきて
「曲、できました」と言って、その場で歌って聞かせました。
「それが、できあがったあの曲、そのものだったんですよ」と
喜多條さんは、感動を語っていました。
いろんなアーティストが語っていますが、
ほんとうに名曲ができる時というのは、
まさに天からふってくるような、
心の底から湧き上がってくるような、
ひらめきわたるもののようですね。
もっとも、それをアレンジして、全体として一曲に仕上げるには
大変な努力が必要ですが。
さて、その歌詞について、喜多條さん、こうせつさんが語っていました。
恋人との同棲生活、それは既存の日本人の倫理、習慣の破壊であり、
実際、それぞれの両親からも強く反対されたそうです。
しかし、若さゆえ、それを恐れず、自己の心にしたがって進んでいた。
まさにそれは
「若かったあの頃、何も怖くなかった」
だったのでした。歌詞は、そこで終わるつもりだったと言います。
しかし、喜多條さんは、
「でも、それだけでいいんだろうか」
と、不安を感じていたそうです。
学生運動のデモからアパートに戻ると、
恋人がやさしく料理を作ってくれている。
それをまた、優しく見守っている自分がいる。
この暖かい場所に、帰ってくる幸せを、もちろん感じている。
でも、このままでいいのかなあ、という漠然とした不安。
いつまでも、これが続くわけじゃないし、
こわい、というか、何というか、
言うに言えない思いが、最後の歌詞
「ただ、あなたのやさしさが、こわかった」
になったそうです。
同じ頃、やはり同棲生活をしていたこうせつさんも、
共感し、これを聞くなり、すぐにメロディが浮かんできた、
そして、かぐや姫を代表する名曲「神田川」が生まれたのでした。
諸行無常、盛者必衰は、世の常とはいえ
今のこの幸せは、続いて欲しい。
でも、やっぱり、移り変わって行くんだろうなあ
あんな時もあったなあ、という日が、やがて来るんだろうなあ。
今はたしかに幸せだけど、心の底に、流れる不安。
釈迦は、その不安の源には、底知れぬ心の闇がある。
これが無明の闇(むみょうのやみ)といわれ、
すべての人の苦しみの根っこなんだと、教えています。
40年以上も前の、『神田川』を聞きながら、
涙する人が多いのは、
いつの時代も変わらぬ、人間の真実を
描き出しているからではないでしょうか。
では、その名曲をどうぞ。
かぐや姫『神田川』
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